TSVIはWallWorkと共に2015年自身の初となるレーベルNervous Horizonをロンドンで設立させた。今までに7枚のEPと複数のデータリリースをコンスタントに着実にリリースさせている日本でもファンの多いレーベルだ。私自身EPの二作目に当たるTSVI- Set You Free EP、三作目のLokane-Visions EP、四作目のLloyd SB- Boida Flare EPには大変お世話になった。Lokaneの EPに限って言えばAir Max ’97と共演した際にIn the Trapをドロップした瞬間Air Max ’97がフロアから走ってきて「この曲なんだ?」と言いレコードのラベルを写真に収めていたのだから間違いのない誰の琴線にもアタックしてくる楽曲だったんだろう。
Rabitの『Les Fleurs Du Mal』でChino Amobiと共に妖艶な囁き声を響かせていたCeciliaことMelissa Gagneは、カナダのモントリオール出身で現在はイタリアのナポリを活動拠点にしている。これまでにもBlack Mammoth、Institutional Prostitutionなどのグループで活動していたようだが、その辺りの活動内容は不明。近年はBabi Audi名義でも活動していたが、すでに若気の至りとして葬られている模様。Cecilia名義としては2017年にYves TumorのレーベルGroomingから『Charity Whore』というEPをデータでリリース。このタイトルや『Adoration』の内容から感じ取れるのは、彼女にとってエロティシズムが創作の源泉の一つなのだろうという事。でもそれがどういう事なのかよく分からないし、Audre Lordeの著作「The Uses Of The Erotic: The Erotic As Power」からインスピレーションを受けているらしいけれど、それも読んでいないので、この際エロティシズムに関しては触れない。 “Cecilia『Adoration』~エモーショナルでエロティックな知性への招待状~” の続きを読む →
Sim Hutchinsの場合は上記のアーティスト達と少し経緯が違います。イギリスEssex出身のAUDIO/VISUALアーティストである彼は、現在Planet Mu/Knivesの運営に携わっているJoe Shakespeareのカセットレーベル(2015年に2作目としてKoenraad Eckerの作品を出して以降リリースが途絶えている)から2015年にデビュー作”Ecology”をリリース。そのEPに3曲プラスしたデジタル音源をがリリース。その後もとの関係は続き、2015年暮れに1stアルバム”I Enjoy To Sweep A Room”、2016にEP”Melanotan II / No Paco Rabanne”をリリース。デビュー作からかなりのクオリティーの楽曲を制作、そしてチープながらもいくつかの楽曲のVIDEOも作成されており、その中では哲学的あるいは社会風刺的な言葉がフューチャーされていたりもします。そういった彼の傾向は楽曲のタイトルにも表れていますし、”Hollywood10″というタイトルもあるくらいですから、映画史への関心の高さも伺わせます。そして1stアルバムに収録されている”Wasp Cell”のVIDEOはFACTmagazineでも紹介され、それなりの注目度を獲得していたと思われますが、その後に続いた2017年のUIQからの”Vantablank Stare EP”のリリースで、僕は初めてその名を知りました。 “Sim Hutchins『Vantablank Stare EP』~内破する音楽~” の続きを読む →
Shapednoise『Deafening Chaos Serenity』に収録の「Pulling At The Seams Of Existence」でコラボレートし、同12″のスリーブに文章をも寄稿、思想的前衛総合芸術コレクティブNONのChino AmobiやElysia CramptonともよくつるんでいるRabitの事、この風変わりで奇妙なアルバムにも何らかの思想性が含まれているだろうが、今そういった側面について調べ、書き記す余裕は僕には無く、多くのリスナーにとってより重要なのは音の面であるだろうと想定し、ここでは音にフォーカスしてその魅力を語ってみたい。